園長コラム


登校拒否や引き籠りの根源的要因は大半が“幼少期の生活習慣と生活体験の品質”によるものと考える

 先週、「教育立国推進協議会」(於:衆議院第一議員会館大会議室)という教育に関する会議で貴重な意見を拝聴する機会を得た。議題は「今なぜ、通信制高校が注目されるのか?」で、幼児教育とは少し離れたテーマであったが、私には家庭での子育てや園卒業後の教育環境を見つめ直す機会となった。先ず驚いたことは、少数の設置であった通信制高校が大幅に増加し、昨年度は学校数では303校(前年より14校増)、生徒数は290,087人(同25,113人増)と過去最高を記録していること。これは生徒の9.1%(私立に限れば18.6%)を占め、高校生の11人に1人が通信制に通っていることになる。通信制高校は株式会社も参入しているので、その活況ぶりに事業者の熱気が会場から伝わってきた。
 一方で、通信制高校の課題は「卒業後」にある。卒業後に進学もせず、就職もしない「進路未定」の割合は28.2%に上り、改善傾向とはいえ全日制4.3%や定時制16.6%と比べて高い。また、進路未定者の卒業2年間・7年間の追跡調査では「何もしていない」が41.9%・33.5%と高く、更に大学に進学したが、途中で退学し「何もしていない」も高い割合に留まっている(詳細は右表参照)。近年、通信制高校でも大学進学率は26.5%まで改善したが、その後の進路・就職までは力が及ばないことが読み取れる。多様な進路を確保する一環で発展した通信制も、自己啓発の面で限界が伺えるようだ。卒業はしたが「何もしていない」では当人が大変だろうし、支える家族も先行き展望は見えずで、寧ろ、当人以上の不安や厳しさがあろうと想像される。
 通信制高校の通学者は、小中時代に不登校や引き籠り経験者が55~60%を占めると言われている。文科省のまとめでは、昨年度全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の状態にある子は346,482人で、前年より15%増で、11年連続の増加で過去最高となった。このうち、小学校が130,370人で10年前の5倍に、中学校が216,112人で10年前の2.2倍に増えている。更にカウントされないような「行き渋り」も含めると、実際はもっと多いと思われる。この他高校生も3年連続の増加とのこと。不登校の状況としては「学校生活にやる気が出ない」が32.3%と最も多く、「不安・抑うつ」が23.1%、「生活リズムの不調」が23%で上位という。学業不振も8~9%、「いじめ、集団生活が苦手,教師と合わない」等の学校生活でのトラブルもある。小学生に多いのが、親と離れることによる不安や自立心が育っていないという内面が未熟であるため、運動や試験等の苦手なことがあると学校を休みたがったりで、生活習慣も身に付かない傾向になるという。
 上記の小中時代の不登校と通信制高校の「何もしていない」は延長線上にある問題点である。近年は学校以外での学習支援を充実させる方針を国が示し、フリースクールなどの受け皿が増え「無理して登校しなくてもいい」という無責任な認識が広がった。学校システムが時代遅れでこのような現象の出現も当然との評論も多く、様々なことが多様化という捉え方からか、何か対策を講じても堂々巡りの議論となり、根本的解決に至らないのである。事実、上記の協議会でも、通信制高校での職業体験の充実などが提案されたが、「馬を水辺に連れていくことはできても…」のとおりの想像がつく。その一方で本丸であるはずの不登校等の解決に触れることは一切なかった。そもそも教育の最たるを考えると不思議なことである。子育てや教育の多様化に応えるための制度とかいいながら、学校を出ても未来を明るく担保する環境から外れてしまう、当の子どもの自立自発が置いてけぼりになってしまっている現実に落胆する思いである。
 私の幼保では、卒業後も不登校等の事例はあまり耳にしないが、前述の現況には驚く。40年前位に、卒業した兄弟が不登校と耳にして驚いたことがあった。在園中は不登園もなく明るい兄弟であったので意外に思ったが、その後の妹の入園後の母親の子育ては意外なもので、結果として、休みがちになり、早々に退園の事態となった。「園にお任せ下さい」と話したが残念な結果であった。我が子に対しては100%の愛情のつもりでも、母親の心配性本位の危うさを痛感した。日々の園生活は様々な刺激で満ちている。集団で体験するので喜怒哀楽を共有しながら自然に心身が成長する。私にはこれがご両親の子育てを考え直す契機となり、以降「幼稚園は休まない」と声高に標榜した。それもあってか今日まで同例は皆無である。
 よって、根本は幼少期の正しい生活習慣と躾しかないと考える。規則正しい生活習慣の繰り返しはセロトニンの分泌を促し、言葉や運動、音楽や絵画は五感を通した脳育ちにダイレクトに効いて、ドーパミンの活発な分泌が期待できる。食育も吟味して整えると鬱体質の抑止も可能なことが解っている。「三つ子の魂、百まで」この心身の成長は一生を支える力となると確信するので、よって、不登校の根本的対策は幼少期での「心育て」しかないと考える。「子ども育ての原理原則で実行する」と真当なオキシトシンでしっかり育つと確信する。

2025年5月号


園長コラム


登校拒否や引き籠りの根源的要因は大半が“幼少期の生活習慣と生活体験の品質”によるものと考える

 先週、「教育立国推進協議会」(於:衆議院第一議員会館大会議室)という教育に関する会議で貴重な意見を拝聴する機会を得た。議題は「今なぜ、通信制高校が注目されるのか?」で、幼児教育とは少し離れたテーマであったが、私には家庭での子育てや園卒業後の教育環境を見つめ直す機会となった。先ず驚いたことは、少数の設置であった通信制高校が大幅に増加し、昨年度は学校数では303校(前年より14校増)、生徒数は290,087人(同25,113人増)と過去最高を記録していること。これは生徒の9.1%(私立に限れば18.6%)を占め、高校生の11人に1人が通信制に通っていることになる。通信制高校は株式会社も参入しているので、その活況ぶりに事業者の熱気が会場から伝わってきた。
 一方で、通信制高校の課題は「卒業後」にある。卒業後に進学もせず、就職もしない「進路未定」の割合は28.2%に上り、改善傾向とはいえ全日制4.3%や定時制16.6%と比べて高い。また、進路未定者の卒業2年間・7年間の追跡調査では「何もしていない」が41.9%・33.5%と高く、更に大学に進学したが、途中で退学し「何もしていない」も高い割合に留まっている(詳細は右表参照)。近年、通信制高校でも大学進学率は26.5%まで改善したが、その後の進路・就職までは力が及ばないことが読み取れる。多様な進路を確保する一環で発展した通信制も、自己啓発の面で限界が伺えるようだ。卒業はしたが「何もしていない」では当人が大変だろうし、支える家族も先行き展望は見えずで、寧ろ、当人以上の不安や厳しさがあろうと想像される。
 通信制高校の通学者は、小中時代に不登校や引き籠り経験者が55~60%を占めると言われている。文科省のまとめでは、昨年度全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の状態にある子は346,482人で、前年より15%増で、11年連続の増加で過去最高となった。このうち、小学校が130,370人で10年前の5倍に、中学校が216,112人で10年前の2.2倍に増えている。更にカウントされないような「行き渋り」も含めると、実際はもっと多いと思われる。この他高校生も3年連続の増加とのこと。不登校の状況としては「学校生活にやる気が出ない」が32.3%と最も多く、「不安・抑うつ」が23.1%、「生活リズムの不調」が23%で上位という。学業不振も8~9%、「いじめ、集団生活が苦手,教師と合わない」等の学校生活でのトラブルもある。小学生に多いのが、親と離れることによる不安や自立心が育っていないという内面が未熟であるため、運動や試験等の苦手なことがあると学校を休みたがったりで、生活習慣も身に付かない傾向になるという。
 上記の小中時代の不登校と通信制高校の「何もしていない」は延長線上にある問題点である。近年は学校以外での学習支援を充実させる方針を国が示し、フリースクールなどの受け皿が増え「無理して登校しなくてもいい」という無責任な認識が広がった。学校システムが時代遅れでこのような現象の出現も当然との評論も多く、様々なことが多様化という捉え方からか、何か対策を講じても堂々巡りの議論となり、根本的解決に至らないのである。事実、上記の協議会でも、通信制高校での職業体験の充実などが提案されたが、「馬を水辺に連れていくことはできても…」のとおりの想像がつく。その一方で本丸であるはずの不登校等の解決に触れることは一切なかった。そもそも教育の最たるを考えると不思議なことである。子育てや教育の多様化に応えるための制度とかいいながら、学校を出ても未来を明るく担保する環境から外れてしまう、当の子どもの自立自発が置いてけぼりになってしまっている現実に落胆する思いである。
 私の幼保では、卒業後も不登校等の事例はあまり耳にしないが、前述の現況には驚く。40年前位に、卒業した兄弟が不登校と耳にして驚いたことがあった。在園中は不登園もなく明るい兄弟であったので意外に思ったが、その後の妹の入園後の母親の子育ては意外なもので、結果として、休みがちになり、早々に退園の事態となった。「園にお任せ下さい」と話したが残念な結果であった。我が子に対しては100%の愛情のつもりでも、母親の心配性本位の危うさを痛感した。日々の園生活は様々な刺激で満ちている。集団で体験するので喜怒哀楽を共有しながら自然に心身が成長する。私にはこれがご両親の子育てを考え直す契機となり、以降「幼稚園は休まない」と声高に標榜した。それもあってか今日まで同例は皆無である。
 よって、根本は幼少期の正しい生活習慣と躾しかないと考える。規則正しい生活習慣の繰り返しはセロトニンの分泌を促し、言葉や運動、音楽や絵画は五感を通した脳育ちにダイレクトに効いて、ドーパミンの活発な分泌が期待できる。食育も吟味して整えると鬱体質の抑止も可能なことが解っている。「三つ子の魂、百まで」この心身の成長は一生を支える力となると確信するので、よって、不登校の根本的対策は幼少期での「心育て」しかないと考える。「子ども育ての原理原則で実行する」と真当なオキシトシンでしっかり育つと確信する。

 

2025年5月号


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