暑さはしばらく続くようだが、間もなく学校の夏休みは終わる。これからまた日々の園生活で良き成長に繋がる根拠ある体験の刺激で子供の脳がしっかり育つことを考えると大いに期待が膨らむ。
さて、先の土曜日に小学生育み教室が行われたが、当日3週休み分の日記がどっと持ち込まれた。毎週の添削でもスタッフからも青色吐息の様子で文集作成までとなると大丈夫かなと心配もするが、今年はほぼ大半が毎日書いてきたようだと報告を受け、親子での頑張りに感心し嬉しく思うのである。休み前保護者各位に有意義な夏休みになるよう頑張りましょうと発破をかけ、その第一歩は毎日の会話と日記の習慣化と申し上げているので、添削も気持ちが入る所である。育み開設も23年目となるが、夏休みの過ごし方も年々充実して感心する親子が多くなったと実感する。後からの提出で目にする自由研究やアイデアマラソンの出来も大変楽しみとなり、日記一つの小さな行動の習慣化が良き影響となり今後の能力向上も大いに期待できる。
長く幼少期の子育て・教育に携わってきたが、年々増して実感することは、理屈も大事だが育ちを左右する基本は日々の体験とその実行にある点である。学生時代からの小中学生対象の学習塾運営や40年以上に亘る運動や言葉、音楽の幼児期の感覚脳を刺激する日々の保育実践の経緯から、毎日意味ある生活体験の繰り返しの重要性が実に大きいと年々感じるのだ。先日手元にあった精神科医で著名な和田秀樹さんの著書祥伝社発行『頭をよくするちょっとした「習慣術」』から小生が再認識したことがあったので少々紹介する。
世界中で評価されている日本の「詰め込み教育」。和田氏は「ゆとり教育」の実施前からこれは間違った考えと断言した。以下…『「詰め込み教育」は子供にとって非常にプラスになる面が多く、最近の脳科学の研究でも、小さい頃の能力特性として、いろいろなことをどんどん覚えることに適していることが明らかになっている。計算のやり方にしろ、漢字にしろ、砂が水吸い込むように何でも吸収できる時期なのだ。そういった時期にいろいろなことを教え込まない手はない。事実、「詰込みの教育」をしている国や地域の方がうまくいっている。例えばインドでは「19×19」までの掛け算を覚えさせるような「詰め込み教育」を行っているが、結果的に世界のIT大国として頭角を現している。世界の趨勢として、日本の「詰め込み教育」に倣おうということになっている。米国やイギリスではペーパーテストをもっと導入して学力を高くするということを政府がはっきり明言している。日本の教育の問題点として、創造性や独創性のある子供を育てられないと、ということを言われるが、そんな証拠はどこにもない。少年犯罪の少なさや自殺率の低さ等のメンタルヘルス面でも世界で最もよかったし、学力テストでも世界で上位に位置していた』。これを読んで私が実感することは、「ゆとり学習」の如き制度上が原因とはいえ、学び不足の事実はその後の人生でも不利に働くという現実である。それから、子育て・幼児教育では前月の学園便りでも触れたが「脳科学の知見」が殆ど活かされていない政策的欠陥ともいえることが未だ続いていることに愕然とする。本園も40年前には、単なる「早教育」「詰め込み教育」とあからさまに非難もされ、園児集めのための特色づくりと揶揄され陰口も数多く耳にしてきたが、近年の脳科学の成果での検証と園児の成長ぶりとが見事に重なる様子に今日では実践での迷いは無くなった。よって和田氏の意見にも賛同でき心強くも感じたのである。
和田氏のいう人生を切り開いていく「頭のよさ」を要約すると、①自分自身の状態(感情)を知っている②困ったときに頼りにできる人間が複数いる③いろいろ起こってくる問題に対する解決能力が高い、の3点が挙がる。②は人と良好な関係が築けることが頭のよさに繋がり、③の問題解決能力は正にその本質であるが、それ以上に重視するのが①の感情である。「負の感情」の動きに対して有効な処方箋として「習慣」や「行動」の重視を唱えている。幼児期での脳の成長では理屈では子供になかなか伝わらない。よって私は「形から入る」、結果それで宿る感覚や感情を重視するので、行動を通した習慣化の重要性は私には直感的に入ってきて、その感情の整理具合が幼児期なだけに性格形成上もとても意義あることに思えるのである。
「頭のいい子」に育つためには子供自身が心底日々の体験が楽しく感じられることが肝心なので、当方でも更なる工夫や配慮、努力が必要と自覚する。家庭においては園と親密なる「子育て観の共有」と、園同様に日々の生活体験が良き育ちの根拠となるような行動が「習慣化」されることを切にお願いする次第である。
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